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疫病神-後編-

昨日の記事の続きでございます。
前後編なのでこれでおしまいです。
一応・・・感動路線を狙ってみたのよ?





奈央「じゃあ、人の不幸を吸い取って生きてるの?」
疫病神「違うぞ、奪ってんだぞ」
奈央「は、はぁ・・・」

どう違うのか分からないが、そこにはこだわりがあるようだ。

奈央「で、不幸を奪われた人はどうなるの?」
疫病神「そんなの幸せになるに決まってるだろ」
奈央「へぇ・・・」

思っていた疫病神とずいぶん違う。
疫病神というと、いるだけで人を不幸にするイメージがあるけど、
実際は良いやつらしい。

奈央「じゃあ良いやつなんだね」
疫病神「なんでだ?」

逆に聞き返されてしまった。

奈央「だって、人を幸せにして生きてるんでしょ?」

奈央の言葉に、疫病神は眉間にしわを寄せて答えた。

疫病神「オマエ何言ってんだ? オイラは不幸を奪ってるってさっき言ったぞ?」
奈央「だから、人を幸せにするために不幸を奪ってるんでしょ?」
疫病神「違うぞ。オイラは人間の不幸を奪うために生きてるんだぞ」
奈央「・・・それってつまり、不幸を奪った人が幸せになるのは、
   別にあんたの意思じゃないってこと?」

疫病神「そうだぞ?」

呆れた・・・。
いや、少しでもこの子を良いやつだと思った自分がバカだった。
詰まるところ、この子は自分のためにやっているだけなのだから。

奈央「はぁ・・・もういいわ」

スッ、と立ち上がり、玄関へと向かう奈央。
疫病神も後に続く。

疫病神「どこへ行くんだ?」
奈央「友達と待ち合わせてんの。あんたもさっさとどこか行きなよ」
疫病神「じゃあオイラも一緒に行くぞ」
奈央「なっ、なんでよ!?」

ただでさえ訳の分からないやつなのに、
友達のところにまで来られてはたまったものではない。
そんな奈央の心中虚しく、疫病神は当たり前といった顔で答えた。

疫病神「オイラはオマエに憑くって言ったぞ。オマエバカだなーアハハハハ!」
奈央「なっ・・・くぅ~~~!」

ゴツン!
指をさして笑う疫病神の頭を思い切りげんこつで殴った。
殴った奈央の手が痛くなるほど固い頭だったが、疫病神にもげんこつは通じたらしく、
目に涙を浮かべて怒った。

疫病神「痛いぞオマエ!! バカのくせになんで殴るんだ!?」
奈央「うるさいバカ! ついてくんな!!」

半泣きになりながら抗議する疫病神を背に、
大きく溜息をついて友達の元へと向かう奈央だった。



目的地についた奈央。
見れば2人の友達はもう到着していた。

奈央「おまたせー!」
友達A「おっ、きたねー」
友達B「あれ、誰その子?」

2人は後ろの疫病神を見て言った。
当然といえば当然の質問である。

奈央「あー・・・この子は」
疫病神「オイラは疫病神だぞ」
友達A&B「え?」
奈央「あっ、この子親戚の子なのっ!
   今家で預かってて、ほら、私一人暮らしじゃない!?
   だから一緒に連れてかないとじゃない!?」


まくし立てるように話す奈央。

奈央は今、一人暮らしである。
それは特別両親と仲が悪いなどの理由ではなく、通いたい学校が近くになかったために、
田舎から上京してきたからだ。

一人暮らしではあるが、奈央は寂しいと感じた事はなかった。
もちろん、自分が不幸だと感じたことも。

友達A「へぇー親戚の子なんだー」
疫病神「違うぞ、オイラは疫病神だぞ」
奈央「こっ、この子ちょっと変わっててっ!」
友達B「良いじゃん面白くてw ねぇ、ボクも・・・奈央、この子名前なんて言うの?」

名前?
そういえばなんと呼べばいいのだろう?
さすがに疫病神ではまずいだろうし・・・。

奈央「や・・・やく君?」

ネーミングセンスに乏しい奈央にはそれが限界だったが

友達B「へぇー、じゃあやっくんで良いかな?」
疫病神「別に呼び名なんてなんでもいいぞ」

案外通じるものだった。

友達A「ねぇ、やっくんも一緒に映画見る?」
疫病神「エイガ?」
友達B「そうそう映画、面白いよー?」
疫病神「それは不幸なのか?」
友達B「不幸・・・かな?」
友達A「恋人が死んじゃう話だから、そうなんじゃない?」
疫病神「それは是非見たいな!」

目をキラキラさせる疫病神。
あっという間に友達とも仲良くなり、手を繋いで映画館へと向かって行った。

奈央「って、まさかあいつのチケット、私が買うの?」

奈央はまたも大きく溜息をつき、3人の後に続いた。



友達A「面白かったねー」
奈央「うん、私最後泣いちゃった・・・」
友達B「ハハハ、分かる分かるw やっくんはどう? まだ難しかったかな?」
疫病神「うん? よく眠れたぞ?」

始まって10分もしないうちに、疫病神はグースカと寝ていた。
一体なんのためにチケットを余分に買ったのやら・・・。

奈央「あんたねー映画館は寝る所じゃないのよ?」
疫病神「・・・・・・」
奈央「ちょっと聞いてんの?」
疫病神「あいつ、不幸だな」

奈央の呼びかけには答えず、疫病神は一点を見つめて言った。
視線の先には1人の男がいた。

奈央「あの人が・・・あ、ちょっと!」

男を見ていると、疫病神は人ごみを掻き分けてズカズカと男の方へ向かった。
周りの人が迷惑そうな顔で見ている。

すいません、すいません!
と奈央は頭を下げながら疫病神の後を追った。

疫病神「おいオマエ」
男「え?」
疫病神「オマエ、今不幸だな?」
男「なんだい坊や? ・・・ああ、でもそうだね。僕は今不幸だ」

疫病神に追いついた奈央。
しかし、おばさんの時と同じように真剣な顔の疫病神を見て、
なんとなく近づくのを躊躇った。

男「僕ね、婚約してる相手がいたんだ。
  でもその人、実は僕以外にも男がいたらしくてね。
  彼女にとって僕は、ただ金を貢ぐ道具だったのさ・・・」


今にも崩れてしまいそうなぐらい悲しい表情の男。
きっと、本気で相手の女の人を愛していたのだろう。

疫病神「そんな事どうでもいい、オマエの不幸をいただくぞ」
男「え?」

男の身の上話には興味を示さず、疫病神は男の服を掴んだ。
すると、おばさんの時と同じように、
男の体から光が飛び出し、疫病神の体へと吸い込まれていった。

男「・・・・・・」
疫病神「よし」

男の不幸を奪った疫病神は、もう用なしとばかりに男に背を向けた。
今気付いた事だが、周りの人にはどうやらあの光は見えていないらしい。

疫病神「あ、そうだ」
奈央「?」

何かを思い出し、疫病神は男の方へと振り返った。

疫病神「オマエ変わってるな、女なんてあっちこっちにいっぱいいるのに」
男「・・・・・・あっ」

それだけ言うと、疫病神は再び背を向け、奈央のもとへと戻った。



帰り道、奈央は疫病神を見ながら、どうしたものかと考えていた。

奈央「・・・・・・はぁ~~~」
疫病神「オマエうるさいぞ、さっきから何回そうやってるんだ」
奈央「しょーがないでしょー出ちゃうんだから・・・はぁ~~~」

頭を抱えながら、奈央はまた溜息をついた。

奈央「はぁ・・・疫病神に憑かれるなんて、私ったらなんて不幸」

落ち込む奈央の顔を見ながら、疫病神は不思議そうな顔で言った。

疫病神「オマエバカな上にウソつきだな」
奈央「・・・どういう意味よ?」
疫病神「オマエからはちっとも不幸の気配がしないぞ」
奈央「・・・はぁ~~~」

なんだかんだと言いつつも、面倒を見る事を受け入れている。
それが奈央の良いところであった。



それからというもの、疫病神は奈央のあとをついては、
関わる人達を幸せにしていった。
学校のクラスメイトや教師、道行く人や隣近所のおじさんおばさんまで。

気付けば、奈央の周りに不幸な人はいなくなっているほどだった。
それから一月が経った頃・・・。

奈央「あいつ・・・今日は学校に来なかったな」

今日は珍しく、学校に疫病神がついてこなかった。
いつもなら私が先に行くと、学校にやってきて文句を言っていたのに・・・。

不安になった奈央は、学校が終わると早足で帰宅した。

奈央「ただいまー・・・やく!?」

帰ってみると、居間で疫病神が倒れていた。
息が荒く、しかも手が半分消えかかっている。

奈央「なにこれ・・・どうしたのやく!?」
疫病神「ハァ・・・ハァ・・・最近、不幸を奪ってなかったから・・・」

疫病神は本来、人から不幸を奪いながら各地を転々とする。
しかし今は奈央に憑いてこの地に留まり続けているため、
奪うべき不幸がなくなっても他の地に行けないのである。

奈央「不幸って・・・じゃあどっかから不幸な人を連れてくれば!」

言いながら奈央は考えた。
そんな人がこの近くにいるだろうか。
マンションのお隣さんも、近所のおじさんやおばさんも、学校のみんなも、
みんな疫病神の力で幸せになっていた。

奈央「どうしよ・・・どうなんの!?」
疫病神「奪うべき不幸がなくなったら・・・オイラは消えるだけだぞ・・・」
奈央「消えるってっ!」
疫病神「疫病神は・・・人間から不幸を奪うために存在するんだぞ・・・
    不幸がなくなったら、いる意味はないんだぞ・・・」

奈央「そんな・・・そんなのってないよ!!」

必死に考えるが、どうしても疫病神を助ける方法が思い浮かばなかった。
なんとかしたい、でもできない。
いつの間にか、奈央の目からは大粒の涙が溢れていた。

奈央「ダメだよ消えちゃ!!」

消えかかる疫病神を抱きしめる奈央。
疫病神も、弱々しく奈央の服を掴んだ。
涙が止まらなかった。

奈央「あんたが消えたら・・・私、私はっ!」

消えてほしくない。
そう奈央が強く思った時だった。

奈央「・・・えっ?」

疫病神の体が光りだした。
いや、疫病神を抱きしめる奈央の体が光っているのだ。

その光は塊となって奈央の体から飛び出したかと思うと、
瞬く間に疫病神の体へと吸い込まれていった。

奈央「これって・・・」

唖然とする奈央。
その目の前で、さっきまで消えかかっていた疫病神の姿が、次第にハッキリとしてきた。
呼吸も落ち着きを取り戻し、やがて疫病神は目を開けた。

奈央「っ! やく、大丈夫なの!?」
疫病神「・・・・・・」
奈央「・・・やく?」
疫病神「オイラに消えてほしくないっていうオマエの不幸、いただいたぞ」
奈央「~~~っ!」

気付けば、また疫病神を抱きしめていた。
腕の中で痛い痛いと言っていたが、しばらくは離さないでいた。



翌日目を覚ますと、どこにも疫病神の姿は見えなかった。

奈央「やく? やく!?」

部屋中を探してみるが、やはり見当たらない。
まさか、やっぱり消えてしまったのだろうか?

そんな事を考えていると、奈央は不意に疫病神と出会った時の事を思い出した。

「オマエから不幸を奪うまで一生憑いてやるぞ」

奈央「・・・そっか、行っちゃったんだね・・・」

それから今日まで、私は一度も疫病神に会っていない。
けど、きっと今もどこかで、誰かの不幸を奪っていることだろう。
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