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succession eyes ~重なる世界~ 第15話

第15話です。
理沙が独房に入ってから3日経っています。

次回更新は金曜日の予定です。
今回もこちらで裏話載せてます。






聡「迎えに来たぞ、理沙」

理沙のいる独房に聡がやってきた。
初め、聡の言っている事が分からなかった。
カギが開けられ外に出て、ようやく3日経ったのだと気付いた。

聡「大丈夫か?」
理沙「何が?」
聡「何がって・・・いや、大丈夫なら良いんだけど」
理沙「・・・そう」

奈々の事、と言おうとしてやめた。
わざわざ思い出させる事もない。それにもう1つ問題もある。

理沙「真希はどうなったの?」
聡「・・・・・・」

早速聞かれた『もう1つの問題』。
平静に見えるが、やはり気にしていたという事か。

理沙「死んだのかしら?」
聡「いや、無事だ。肉体的・精神的には何の後遺症もない」
理沙「・・・・・・」
聡「・・・どうした?」
理沙「肉体的・精神的には、なんて随分遠回しな言い方ね」
聡「・・・精神面は以前とまるで違う。
  恐らく、治療の際に投与していたらしい薬が関係してるんだろう」

聡は少し悔しそうだった。
実際に再開して話した時、真希にナナが重なって見えたからだ。
マリアンヌは『予期せぬ副作用』と言っていたが、感じの良い笑顔が逆に聡を疑わせた。

聡「後で上官からも説明されると思うが、
  真希の教育係はお前からラズヴェール姉妹に代わった。
  もちろん部屋も、これからはラズヴェール姉妹と同じ部屋で過ごす事になる」

聡の説明を聞く間、理沙は変わらず無表情だった。
感情のつかめない理沙に、心の片隅で戸惑いを感じた。

真希「おーねーえーちゃーん!」

柱の陰から真希が現れた。初めて会った時と変わらない明るい笑顔だ。
その笑顔に聡だけが疑問を抱いていた。
あんな明るい笑顔なんて・・・。

理沙「真希、もう大丈夫なの?」
真希「うん! お姉ちゃんも出れて良かったね!」
理沙「ありがとう」
真希「それでね、お姉ちゃんにプレゼントがあるの!」

相変わらずの人懐っこい笑顔。聡が言っていた事は単なる勘違いだったのか?
真希ははしゃぎながら後ろ手に持っていた『それ』を理沙に向ける。
それはスタンリボルバーだった。

聡「っ!?」
マキ「バーン♪」

擬音と共に引き金を引くマキ。
しかし弾は出てこない。入っていないのだ。

マキ「ビックリした? 弾は入ってないよ。私まだ弾の作り方知らないもん♪」
聡「だっ、だとしても人に向けて、しかも引き金を引いちゃだめだろ!!」
マキ「どうして?」
聡「どうしてって!」
マキ「だって私、お姉ちゃんのせいで死にかけたのに」

ゾッとするような冷たい笑顔だった。
弾が入っていれば理沙は殺されていたかもしれない。
そう思わせる笑顔だ。

???「マキ」

背後から声がした。振り向くとミリアンヌが立っていた。

マキ「ミリアお姉様!」

2人を押しのけてミリアンヌの元へ駆けていくマキ。
『今まで』との違いもあり、その姿がより幼く映った。

ミリアンヌ「やはりあなたが持っていたのですね。ダメでしょう?
      勝手に持ち出したりしては」

マキ「ごめんなさい・・・理沙お姉ちゃんを驚かせたくて」
ミリアンヌ「全く、困った子ですわねぇ」

子供のちょっとしたイタズラを叱るような言い方だった。
その言い方が聡は許せなかった。

聡「待てよ!」
ミリアンヌ「あらMr.サトル、どうか致しまして? 顔が怖いですわよ?」
聡「・・・注意すべきはそこだけじゃないだろ。理沙に銃を向けたんだぞ」

務めて冷静に言ったつもりだが、怒りは隠しきれていない。
そんな聡を見つつ、しばらく考えてからミリアンヌが口を開いた。

ミリアンヌ「・・・言われてみれば確かにそうですわね。
      マキ、次からは許可なく人に銃を向けてはなりませんわよ?」

マキ「はい! ミリアお姉様♪」

まるで反省の色がない2人に新たな苛立ちを覚える聡。
しかし、さらに言おうとした聡を理沙が制止する。

理沙「やめておきなさい聡」
聡「っ! なんで止めんだよっ!」
理沙「私はどこも怪我してないんだから、もう良いじゃない・・・それに」

理沙の視線が2人に移る。

理沙「もう・・・何を言っても無駄よ」

マキもミリアンヌも、確かに言って意味があるとは思えなかった。
今なら聡にも見える。2人の目の奥に宿る狂気が。
そして、聡には同時に別のものも見えていた。
理沙の目の奥の方に薄っすらと、しかし確実に宿る冷たい光を。




奈々「なんであんたまで避けてんのよ」

休み時間、理沙が先生の手伝いで教室から出て行った隙に、
奈々は聡に理由を問い詰めていた。
昨日は理沙が、今日は聡までもが、互いに互いを避け合っている。

聡「なんでって・・・」
奈々「理沙が避けるのも良く分かんないけど、あんたはもっと分かんないわよ」
聡「いや・・・だって、迷惑だろうし」
奈々「はぁ!? 理沙がそう言ったわけ?」

薄々気付いてはいた。
聡は避けてるんじゃなく、話しかけられないのだと。
理沙が避けている原因が分からず、自分の中で原因を想像し、
その結果話しかける事ができないのだと。

奈々「大方『迷惑だ』とか『嫌われてる』とか思ってるんじゃないかと思ったら・・・はぁ~」
聡「違うのかよ?」
奈々「当たり前でしょ? 理沙がそんな風に思うはずないじゃない」
聡「・・・篠崎がそう言ったのかよ?」
奈々「え・・・」
聡「笹川が勝手にそう思ってるだけで、篠崎が言ったわけじゃねぇんだろ?」

確かに理沙から直接聞いたわけじゃない。
それらしい事は言っていたが確証はない。
しかし奈々は胸を張って言った。

奈々「言わなくても分かるわよ。理沙はあたしの親友なんだから」
聡「・・・俺にはわかんねぇよ」

きっと、聡君も気付いていたのかもしれない。
迷惑だとか、嫌われてるから避けられてるんじゃない事に。
でも他に適当な理由が思い浮ばなくて、自分に原因があると思い込もうとしてる。
自分を傷付けようとしてる・・・。

奈々は最初、聡に発破を掛けるつもりでいた。
しかし聡の気持ちに気付いてしまった今、それはできなかった。
聡の姿があまりにも痛々しかった。




理沙「篠崎理沙、3日間の謹慎生活を終え、本日より現場に復帰いたします」
上官「うむ、頭は冷えたかね?」
理沙「はっ、大変申し訳ありませんでした」

今日は任務の予定はない。この報告が終われば後は明日まで自由時間だ。
聡は理沙と少し話したいと思っていたが、理沙はどうするんだろう?
何か予定はあるのだろうか・・・。

なんて事を考えている間に報告が終わった。
理沙は上官に一礼してこちらへ戻ってくる。

聡「おう、おつかれ」
理沙「・・・・・・」
聡「なぁ、良かったらこれから気晴らしにどこか行かないか?
  3日も地下にいて退屈だったろうし・・・」

理沙「悪いけど、行く所があるの」
聡「そっか・・・あっ、じゃあ俺も一緒に!」
理沙「悪いけど・・・私以外は行けないの」

その言葉には有無を言わさぬ迫力があった。
語調こそ静かだが、明らかな拒否が見て取れる。
聡もそれ以上は何も言えなかった・・・。




聡は考えていた。奈々はああ言っていたが、実際はどうなんだろう?
迷惑がって避けている訳ではないと思ってはいる。
だが理由が分からない以上、もしかしたらと思うと声をかけるのは躊躇われた。

不意に理沙と目が合った。
すぐに視線は逸らされてしまったが、一瞬見えた理沙の目は何だか悲しそうに見えた。

聡「よし・・・篠崎!」
理沙「っ!」

理沙を呼び止め、聡はかけて行く。
呼び止められた理沙は、しかし振り向こうとはしなかった。

聡「ちょっと良いかな、話したい事があるんだけど」
理沙「ご、ごめんっ! 先生に呼ばれてるから」
聡「じゃあ放課後は?」
理沙「放課後は・・・ええっと・・・ぶっ、部活がね!」
聡「終わるまで待ってるよ」
理沙「ええっと・・・ええっと・・・あ、先生のとこ行かなきゃ!」
聡「待てよっ!」

慌てて行こうとする理沙の手を思わず掴んだ聡。
その手は理沙によって振り払われてしまう。

理沙「・・・ごめんなさい」

それだけ言って理沙は行ってしまった。

聡「なんだよ・・・やっぱこうなるんじゃねぇかよ」

払われた手が痛かった。




自室に戻ってきた理沙。だが彼女の気配は感じられない。
・・・いや、その言い方は正確ではない。
『この部屋には』彼女の気配を感じないだけだ。
遠くの方ではあるが、微かに彼女の存在を確認できる。
今までこれだけ離れた距離で彼女を感じた事はなかった。
繋がる力が日に日に強くなってきているのは間違いない。

理沙「ここまでくれば・・・」

彼女の帰りを理沙は静かに待っていた。
右手に『それ』を持って。
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