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succession eyes ~重なる世界~ 第17話

第17話です。
残すところあと3話。目が見えなくなった理沙は果たしてどうなるのか!?

今回もこちらで裏話載せてます。
次回更新は回線が大丈夫なら金曜日の予定です。






コンコン。

理沙「ッ!」

誰かがドアをノックした。
思わぬ痛みにあれだけ叫んだのだ。
近くを通っていれば不審に思っても不思議はない。
理沙にとって問題はそこではない。
問題なのは・・・。

理沙「・・・だれ?」

基地内は絶えず見回りの兵が巡回している。
その兵か? なら対処のしようはある。
それとも聡だろうか? 何か言われるかも知れないが大事には・・・。

マリアンヌ「Miss.リサ、今の声は何かしら?」
理沙「ッ!!」

最悪の相手だ。
マリオネイターは普段、
マリアンヌ達の所属する研究チームの管轄下にある武器庫に保管されている。
持ち出すには上官(大尉)以上の階級を持つ者の許可証が必要だが、
理沙はそれを無断で持ち出していた。

聡なら、もしかすれば上に報告しなかったかもしれない。
しかしマリアンヌにそれは期待できない。知られれば確実に報告される。
その前にマリオネイターを隠さなければ!

理沙「何でもないわ、心配しないで」

返事をしつつマリオネイターを探すが、目が見えず手探りではなかなか見つからない。
急がなければ、と文字通り周りが見えないほど焦っていた。
だから分からなかった・・・頭上から声がするまで。

マリアンヌ「探しているのはこれかしら?」
理沙「えっ・・・」

声はすぐ真上から聴こえた。
焦るあまりにマリアンヌが部屋に入ってきた事に気付かなかったのだ・・・。

マリアンヌ「やはりあなたが持ち出していたのですね」
理沙「・・・っ!」
マリアンヌ「それにしても・・・まさか失明するとは思いませんでしたわ。
      これは本当に予期していなかった副作用ですわね」

理沙「これは・・・」

これは副作用じゃない、と言おうとして、マリアンヌの言葉に違和感を覚えた。
『本当に予期していなかった』
それはつまり、奈々の人格崩壊は予期された事?

理沙「今の・・・どういう事?」
マリアンヌ「え?」
理沙「本当に予期していなかったって・・・奈々がああなるのは予期していたって事?」
マリアンヌ「・・・・・・」
理沙「・・・どうなのよ」

握るこぶしに力が入る。
掴みかからなかったのは目が見えず、それが返って理沙を冷静にさせていたからだ。
と言っても、あと一歩のところで踏み止まっているだけだが。

マリアンヌ「・・・強力な武器に相応の副作用はつきものですわ」
理沙「っ!!」

その言葉を聞き終わるや否や、理沙はマリアンヌに掴みかかった。
だが目が見えないために、その手は軽くあしらわれてしまう。

マリアンヌ「怖いですわぁ・・・口封じでもなさるおつもりかしら?」
理沙「あんただけは・・・殺してやるわっ!」

その時、ドアが勢い良く開けられる音がした。

衛兵A「マリアンヌ様、何事ですか?」
マリアンヌ「違反者です、連行してください」
衛兵B「はっ!」

部屋に入ってきたらしい複数の衛兵に取り押さえられる理沙。
それでもなおマリアンヌに向かって叫ぶ。

理沙「あんたのせいで! あんたのせいで奈々も真希もおかしくなったのよ!!」
衛兵A「何を言っているんだ・・・?」
マリアンヌ「どうやら無断でこれを使ったようですわ。精神が錯乱しているのでしょう」
理沙「許さない・・・許さないわっ! 離してよ!!」
マリアンヌ「ふぅ・・・見るに耐えませんわ。早く連れて行って下さいな」
衛兵B「はっ! さぁ来るんだ!」
理沙「離して! 離してよ!!」

叫びも虚しく、理沙は衛兵の手によって連行された。
後に武器を取り上げられ、鎮静剤が打たれた。




理沙「はぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・」

家から逃げ、電車に乗った所で理沙はようやく落ち着き始めていた。
乱れた息をゆっくりと整えていく。

理沙「(理沙さん、どうして?・・・それにこの目)」

もう『理沙』とは繋がっていない。
それなのに、理沙の左目は変わらず光を宿していた。
いや、『変わらず』ではない。その目が映すのは自分が今いるこの世界だ。

理沙「(左目が普通に見える・・・これって)」

理沙が自分の身に起きた事をほぼ把握した頃、
理沙が降りようとしている駅の近くで『それ』は起きていた。




上官「シノザキ リサ、何か弁解の言葉はあるか?」
理沙「・・・・・・」
上官「・・・なぜマリオネイターを持ち出したんだ?」
理沙「・・・・・・」
上官「・・・マリアンヌに襲い掛かったのは事実隠蔽のための口封じか?」
理沙「・・・・・・」

理沙は何も答えなかった。
鎮静剤のせいではない。まして何か薬を投与されたわけでもない。
答える気力がないのだ。何をどうしても事実は変わらない。
奈々を失い、真希を失い、自分を見失った挙句に『彼女』まで失ってしまった。
もう、何も残っていない。

上官「・・・なぜ何も答えないのだね?」
ミリアンヌ「返す言葉がないんですわ。よりにもよってお姉様に掴みかかるなんて・・・」
マリアンヌ「マリオネイターは彼女の部屋にありました。
      自分自身に使った痕跡があります」

上官「自分自身に?」
マリアンヌ「Miss.ナナの事を忘れようとしたのでしょう。
      しかし力が足りず、マリオネイターが暴走して視力が失われたのかと」

上官「うむ・・・」

あらぬ理由をでっち上げて話すマリアンヌ。
今の理沙には、それを否定する気すら起きなかった。

ミリアンヌ「上官、相応の処罰を申請したしますわ」
マリアンヌ「そうですわね。わたくしとしても心苦しいですけど、
      ここで見逃しては組織の規律が乱れてしまいますわ」

上官「そうだな・・・やむを得ないが」

上官はマリアンヌに手渡された資料をパラパラとめくりながら考えた。
しばらく後、理沙の処分が決定された。

上官「シノザキ リサ! 武器の無断使用、非戦闘員への暴力行為、
   及び組織への反逆行為により、君の戦士としての資格を剥奪する!」




どうしようか・・・家出をしたいわけではないが、家には帰れない。
電車の中で理沙はこれからの事を考えていた。
家に帰ってまた同じような事が起こったら・・・でも、親にどうやって説明しよう。
悩んでいる間に目的の駅に着いた。
学校へ向かう事にこれと言った理由はない。他に行く場所が思いつかなかっただけだ。

駅を出ると、ちょうど学校帰りの奈々とあった。
先に理沙が奈々を見つけて声をかけた。

理沙「奈々ちゃん!」
奈々「理沙? 何でここに・・・先に帰ったんじゃないの?」
理沙「ええっと、何から説明したら良いんだろう・・・私も良く分かんなくて」
奈々「・・・とりあえず、分かる事から順番に、落ち着いて説明して」
理沙「う、うん・・・ええっと・・・?」
奈々「・・・どうかしたの?」
理沙「・・・理沙さん」
奈々「はい?」

理沙の目線はどこか遠くを見ている。
一応視線の先を見てみるが誰もいない。

理沙「理沙さん、苦しんでる」
奈々「え、なに? 誰の事言ってるの?」
理沙「理沙さんだよ! 感じるの・・・孤独に苦しんでる!」
奈々「落ち着いて理沙! 誰もいないわよ!」
理沙「だから感じるの! 理沙さんが苦しんでる理由、これだったんだ・・・」

理沙に『理沙』の心が流れ込んできた。
大切な戦友、真希、自分を傷付けた事。その後悔と絶望が伝わってきた。

理沙「私・・・理沙さんの気持ちに気付いてあげられなかった」
奈々「えっと・・・良く分かんないけど落ち着きなって」
理沙「・・・えっ、これって」

理沙が何を言っているのか分からなかったが、
何か見えているのは間違いないようだ。
今度は何があったのだろう?

理沙「大変!」
奈々「何? どうしたの?」
理沙「理沙さんに魔獣が迫ってる」
奈々「は?」

話が飛びすぎてまるで分からない。
しかも魔獣がどうとかまで言い出している。

奈々「ねぇ理沙。今日の聡君の事、ショックなのは分かるけどさ・・・」
理沙「・・・・・・」
奈々「・・・理沙? もしもーし?」
理沙「・・・助けなきゃ」
奈々「えっ?」
理沙「助けなきゃ! このままじゃ、理沙さんきっと殺されちゃう!」

理沙の目には薄っすら涙が滲んでいた。
その目から伝わる真剣な気持ちが、冗談ではない事を奈々に教えた。

奈々「・・・助けるって、どうやって?」
理沙「分かんないけど・・・何とかできないかな?」
奈々「あたしに聞かれても・・・あっ」
理沙「何か方法が!?」
奈々「確か前にその人と話してたわよね?
   また話して教えてあげたら良いんじゃない?」

理沙「無理だよぉ~; 同じ場所じゃなきゃ繋がらないし、
   理沙さんのいるとこに戻る前に魔獣に襲われちゃうよ;」

そこで理沙は思い出した。『繋がる』という言葉で。

理沙「そうだ・・・」
奈々「えっ、なんかあったの?」
理沙「これならきっと・・・でもどうやって・・・」

何かを模索するように呟く理沙。
奈々にはその意図を知る術はない。

理沙「この左目が理沙さんのものなら、きっとできるかもしれない・・・」
奈々「?」

理沙は目を閉じた。そして静かに祈った。
『理沙』を救いたいという、強い想いを胸に。




理沙は街中にいた。もちろん武器など持っていない。
共に行く者もいなければ歩く目的も行く当てもない。

戦士の資格を剥奪された理沙は基地を追い出された。
『戦士でなくなった者』があの基地に置かれる理由は何もない。
それから理沙は、ただフラフラと歩き続けていた。
思い出すのは後悔ばかり。なぜ『理沙』にあんなひどい事を言ってしまったのか。
そればかりを思い返していた。
どれだけ歩いたろうか。背後に何かの気配を感じた。

魔獣「グルルルル・・・」

どうやら魔獣のようだ。しかし迎え撃とうにも武器がない。
それに目が見えないのだ。見えない状態でどうやって戦えというのか。

理沙「(・・・いや、もう戦う必要はないか。私にはもう・・・目的がない。
   いっそこのまま魔獣に食べられるのも良いかもしれない。
   それで、あの子を傷付けた罪が償えるなら・・・)」

理沙は立ち止まった。
魔獣は一瞬警戒したが、すぐに獲物に抵抗の意思がない事を知る。
そしてゆっくりとその距離を縮めていった。

理沙「・・・さようなら」

誰にともなく別れを告げた。魔獣が理沙に襲い掛かった。


理沙「生きて理沙さん!」
理沙「えっ?」

声に驚き目を開くと、その両目には襲い来る魔獣の姿が映し出された。
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